ラグビーに乾杯 217

11月6日、日本代表対ロシア戦の夜、青山で熱い集いがあった。
「ノーサイドプロジェクト'10秋」。
日本開催の決まった'19年W杯を盛り上げようと、昨年、ラグビーファンの間で話がスタート。『ノーサイド」の持つ精神を広めて、ラグビーファンを増やそうという趣旨で、この名がつけられた。過去2回、イベントが開催されたが、今年は賛同してくれるファンや企業も増え、大きな会場で行われることに。スタッフは全員ボランティア、仕事の合間を縫って何ヶ月も前から打ち合わせを重ねたという。東芝から廣瀬、冨岡、三洋から下村選手をゲストに、当初はジャパンも数名駆けつけてくれる予定だったのだが、全員が参加することになり、最終的には3百人を超えるファンが会場に集まった。このイベントがこれまでと違うのは、ファン同士のつながりから生まれたものだということ。
それもラグビーというスポーツの良さではないだろうか。愛してくれる人の熱なくして、何が代表ぞ。そんな当たり前のことを思い出させてくれる夜だった。
(文/R♥森本優子 イラスト/くじらいいく子)

netki.jpg

編集長コラム JAN.2011

NZに住む知人から便りが届く。「JKはこちらで,うつ病を克服した本を出版し、サイン会、テレビ、新聞のインタビュー・・・と、忙しいようです。ジャパンの方に、もっと力を入れてくれよ!」。
サモアに敗れた試合の放映を見た後だと書いてあったから興奮していたのだろう。でも、日本のファンも同じような気持ちのはず。いい試合をもっとたくさん見せてよ、である。最強でないサモアと、疲れたロシアと戦って、「はい、終わり」では、せっかくのラグビーの季節が寂しい。この時期に琴線に触れる試合をするのは大学生で、ジャパンにはそれがないのだから、スタジアムに足を運ぶ人数が大きく違っても不思議はない。(田村一博)


column_1.jpg

どっこい生きている。− DAI HEART

大敗に魂を見る。
ラグビーならではの美しい瞬間だ。いつもいつもそうはいかぬが、まれになら遭遇できる。
11月13日、土曜の午後の秩父宮ラグビー場がそうだった。トップイーストのセコムーキャノン。
それぞれ1勝6敗と7戦全勝の対戦である。0-55。順当かもしれぬ数字の並びに物語の存在は想像しづらい。
しかし一方的でない時間の流れを経た一方的スコアの一戦こそは「良き人間の物語」なのであった。
セコムラガッツ、永遠なる背番号1、36歳独身、本社営業開発3部所属、山賀敦之の試合中の顔を凝視したら、よほどの冷血でなければ泣けてきただろう。「人前で泣くな」が家訓なら涙の気配をそっと飲み込んだはずである。なんと記すのか、酸素が足りなさそうなのだ。つまり「出し切り」。オールアウトだ。学生でも途中交代がお約束のようなプロップ稼業なのに、本日もフルタイムで力を尽くす様子に「健康」が心配になった。
 NO8の高根修平主将(青梅支社)の再三の突破、いや「突破」という単語では説明のつかぬ何かに憑かれたような前への衝動も、見る者の涙腺に働きかけた。(文/藤島大)


4Z9Y9459.jpg
1