
惜敗、大勝で幕を閉じた秋の日本代表シリーズ。ロシア戦は若手を試すための80分となり、来年の本大会に向けたチームの課題は、 逆転負けしたサモア戦にこそ隠されていた。なぜ。ジャパンは、経験の浅い選手で構成されたサモアに勝つことができなかったのか。文/村上晃一

FWの軸として、痛い仕事を一手に引き受ける NO8ホラニ 龍コリニアシ
暗雲たれ込めた空から、ほんの少し雲が薄くなって光が漏れた。そんな印象を受けるテストマッチ2試合だった。第1戦のサモア代表は、
世界ランキングこそ日本より上だが、ヨーロッパで活躍するプロ選手が参加せず、自国でプレーする若手主体の布陣。コンビネーションにも不安があり、ベスト
メンバーで臨んだ日本にとって勝たなければいけない相手だった。 台風の影響で強い風雨にさらされる開くコンディションの中、秩父宮ラグビー場には熱心な
ファンが、3743人詰めかけた。
前半20分までは日本ペース。2分、SOアレジのPGで先制し、7分にはゴール前スクラムからCTBニコラスが縦に切り込んで、ラックとなり、
素早くサイドを攻めたNO8龍コリニアシがトライして、10-0とリードを広げる。スクラム、ラインアウトも安定し、危なげはないように見えた。
ところが、「簡単にスコアできて、少し緩んだかもしれない」というWTB小野澤の言葉どおり、日本は失速した。流れはサモアに傾き
ゴールラインを背に日本が耐える時間が続いた。密集サイドを執拗に力攻めするサモアに、素早いリアクションでことごとく跳ね返す日本。結局、白熱の攻防は
双方譲らず、前半はそのまま終了した。
後半に入っても、流れは変わらなかった。風下にたった日本は、多発するミスに慎重になりすぎて思い切った攻撃を仕掛けず、地域を
進めようとするキックもことごとく精度を欠いた。一方、サモアは後半開始から手を打っていた。「攻撃をスピードアップさせたかった」(サモア代表タフアヘ
ッドコーチ)と、本来SHのフォトゥアリイをSOに移動させていたのだ。すーぱ−14のクルセイダーズでも活躍するフォトゥアリイの卓越したランニングスキルに、
日本は連続してデフェンスラインを破られ、後半29分、ついに逆転トライを奪われてしまう。
試合後、ジョン・カーワンヘッドコーチ(JK)は言った。「今日は勝ち方を学ぶ試合だった。接戦の中で勝利をもぎ取れなかったのは残念。
後半、ボールがキープできなかったのが敗因でしょう」 再確認されたことは、ゆったりとした試合運びでは、日本は若いサモアにすら力負けしてしまうということ
だ。ボールを素早く動かし、先に仕掛け続けなければ、W杯本大会でも勝利はおぼつかない。「早く、低く、激しく」。JKジャパンのキャッチフレーズが、虚しく響く
敗北だった。 その後の宮崎合宿では、もう一度基本に立ち返る練習が行われた。キックチェイス、ラックなどの約束事を確認し、相手より先に仕掛ける
ための準備を整えロシア戦を迎える。 11月6日、快晴の秩父宮ラグビー場に登場した日本代表の先発メンバーには、初キャップとなるFB田邉淳、初先発となるSH和田
耕二の姿があった。

のびのびとプレーし、潜在能力の高さを見せつけた FLリーチ