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ランナーが高い位置で球を受けてゲインを切るから、2、3人目サポートも速くなる。故障の榎本光祐に代わって出たSH西橋勇人のさばきも冴え、早大のリズムが生まれていった。
ただ、ハイライトは攻撃ではない。後半29分、山中のキックミスから生まれた明大のカウンター攻撃を、逆サイドからバッキングアップした中濱が止めたシーンだ。「あとでビデオを見たら、僕だけじゃなく、みんなが必死に戻っていたのに驚いた」早大

思い切りのいい走りで早大をペースに乗せたFB井口。サポートするのはFL山下(写真中央)とLO中田
にとっては最も大切で、だけど希薄になりがちだった「ひたむきさ」を、才能あふれる集団が共有した瞬間。早慶戦からもっとも変化したのは、一人一人の意識だった。辻監督は「1対1」を今季のキーワードに掲げ、チーム作りを進めてきた。そのため、春は徹底的に走り込み、特にゴールデンウィークは2部練で体をいじめ抜いた。「他のチームより絶対に走った自信がある。僕なんか春より10キロくらい体重が落ちた」と井口。中濱は「早明戦からやっと体調がよくなってきた」というから、大学選手権にむけて、蓄積はより生きていくはずだ。明大の吉田義人監督は早明戦後、「相手に速いプレーをさせないためのタックルとブレークダウンをつけていかないといけない。課題は明確なのでしっかり修正したい」と言った。細谷ヘッドコーチは「後半はもう少しBKに回してもよかった」と悔やんだ。どちらも、敗者が取り組まないといけない課題に違いない。ただ、ファンの願いは「押せ押せ、明治」の声援に詰まっている。早大は黒星をバネにした。もう一度原点を見つめ直し、「前へ」を追求してほしい。